southboundtrain1961’s blog

本、音楽、美術、映画、料理、外国語等々、感じたこと徒然。

「ソングの哲学」ボブ・ディラン(佐藤良明訳。岩波書店)

圧倒的な博識、言葉のイメージを膨らませ、歌の持つ本質をつかみ出して、さらけ出す。

選ばれた66曲は、知ってる曲も知らない曲もあるが、歌をこんな風に考えたことはない。また、歌の中から、これ程多くの感情、意味、歴史、情報等々を引き出せるのは、ディランしかいない。

一体ディランは、どれだけたくさんの歌を知ってるのだろう。そして、どれほど真剣に歌と向き合ってきたのだろうか。

ティーブン・フォスターからエルヴィス・コステロまで、選ばれた歌は、一見何の脈拍もなさそうだが、基本的にアメリカの古くからある伝統的な音楽から、注意深く選ばれていると思う。歌手もそうだ。

ディランの洞察力は、歌の底にある人間の存在そのものを炙り出し、さらけ出す。

英語のsongに対応する言葉は、

歌、詩、唄、詞、日本語でもこれだけある。

それに、ストレートに「ソング」と当てはめた訳者は、誠実だと思う。

題名に偽りなし。哲学書、稀代の名著です。